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フェス1週間前に

フェス開催まで1週間を目前に、それまでは特に感じなかった不安が一気に押し寄せた。

抜かりはないか?
気づかないところでに誰かに迷惑をかけてやいないか?
お客さんは来るのか?
出店者・市役所・関係者を裏切らないか?
この大役が俺に務まるのか?
このフェスを成功させられるのか?

僕は不安というのは邪魔だなと思う。
それがあることで負なことはあってもいいことがあるとはあまり思えないからだ。

今この不安に潰されてしまったら成功どころではない。
仲間に支えてもらっているが、僕が倒れてしまってはこの船はきっと路頭に迷ってしまう。


気持ちは強く持っていたいが、そう上手くはいかない。それが不安なのだろうと思う。
そんなことを考えながら帰っていると、ふと数年前のことを思い出した。








20歳そこそこだった時、慕っていた先輩が亡くなった。

厳しくもあり優しくもあり、なんでも僕が昔の後輩に僕が似ているとかで、必要以上に可愛がってくれていた。
二人の先輩と先輩の間に挟まれた時期があり、少し疎ましいと思ったこともあったが、僕は人間としてとても好きだった。


いつからか顔を合わせる頻度が少なくなったある日の朝、先輩の彼女からの電話には本当に驚かされた。
動転する彼女にどんな対応をしたか、よく覚えていない。
とにかくタクシーに飛び乗って関係者みんなに連絡をして、病院に向かった。
病院では先輩の家族や他の人たちが来るまでの間、言葉が出ない彼女の代わりに医師や警察に状況説明や関係性などの代理をした。
ついこの間まで学生だった当時の僕には、重すぎる任務だった。

先輩が亡くなった日も告別式の日も、たくさんの涙する人を目にして、なぜだかちっとも涙が出なかった。
ばあちゃんや親戚以外の人の死を目前するのは初めてだったけど、意外とこんなもんなのかと思った。
みんな僕の分まで泣いてくれたのだと、そう思った。



その頃仕事では、大きなフェスを2ヶ月後に控えていた。
会社としてもとても大きな仕事の一つで、そのフェスは先輩が指揮を執るはずだった。

…誰がやるんだ?

誰かが言ったのか、もしかしたら誰も言ってなかったのかわからないが、僕には答えがわかっていた。


告別式が終わった次の日の葬式。
この日も僕は悲しみに浸ることもなく、涙することなく、泣きじゃくる人たちを見送りながらただ呆然と眺めていた。

決められた順序通りに葬式が終わり、後片付けをしていた。
会場からは一人いなくなり二人いなくなり、いつの間にかフェスを一緒に進行してくれている会社の方と二人きりになっていた。
毎年この方が現場での責任者として運営をしてくれている。

今だなと思った。

力不足かもしれませんが、今回のフェスを僕に任せて欲しいです。

そう伝えた。

ありがとう、元基に任せる。頼むね。と言ってくれた。
そう言ってもらうと、やっと糸が切れたのか、涙が溢れだし、僕は大人気なく大泣きをした。
涙が全然とまらなかった。
その人も顔を真っ赤にして一緒に泣いてくれた。

それから毎年のフェスは僕にとって特別なものになった20歳そこそこの出来事だった。


あれから時は流れて、気づけば僕は先輩が亡くなった年になろうとしている。
結婚をして、小さい家族が一人増えた。
優しい人になってほしいという思いで、「優人」と名付けた。


今までフェスといえばお店としてブース出店をしていたが、今度はお店を集めてバンドを呼んで、お客さんを呼んで主催している。

あれから少しは成長したのだろうか。
不安は確かにあるけど、きっと大丈夫なのだろうとどこかで安心している。
信頼する仲間のおかげだろう。


あの時の僕は自分でも勇気のある決断をしたと思う。
よくやった。だからこそ、今がある。

必ず成功させますよ。
見ててくださいね、大悟さん。



2018.09.30
川野 元基
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